第19回「野生生物と社会」学会篠山大会
自由企画テーマセッションのご案内
【テーマセッション名】
題名『特定鳥獣保護管理計画の展開を考える(1)-目標達成に向けた体制構築-』
【企画者】
中村幸子(兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター)
辻知香(兵庫県森林動物研究センター)
【趣旨】
鳥獣保護法の改正により、特定鳥獣保護管理計画制度が創設されてから10年余りが過ぎました。この間、野生動物との軋轢問題は一層深刻になり、近年では多くの都道府県が各獣種に対する保護管理計画を策定しています。しかし野生動物による被害は依然増加傾向にあり、課題として、現状を反映しなおかつ問題解決の道筋となる管理計画の策定と実施、およびその評価が不十分であることが考えられます。本テーマセッションでは管理計画の目標達成のために必要不可欠である、適切なモニタリングと評価における現状の共通課題を整理し、さらにモニタリングを反映した管理の実施体制構築ためのヒントおよびポイントを整理することにより、今後の課題を議論したいと思います。
【講演者と講演タイトル】
- 特定鳥獣保護管理計画における現状と課題-モニタリングと評価を中心に-
関香菜子(自然環境研究センター) - 実行力を伴う野生動物の管理技術・体制の構築に向けて-静岡のシカ管理から-
大橋正孝(静岡県森林・林業研究センター) - 科学的データに基づく管理体制構築への課題
小林万里(東京農業大学)
コメンテーター:
坂田宏志(兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター)
【テーマセッション名】
「野生動物と向き合う女性たち第二弾~管理から利活用まで」(男女共同参画企画)
【企画者】
八代田千鶴(森林総合研究所関西支所)、岩井雪乃(早稲田大学)
【趣旨】
人と野生生物をめぐる様々な問題の解決には、多様な視点や価値観からのアプローチが必要です。現在、獣害対策や中山間地域振興などで、野生動物と関わる女性が増えてきており、野生動物の管理から利活用までの一連の過程に関わる活動を担うことで、問題の解決に向けた新たな視点をもたらすと期待されています。
「野生生物と社会」学会では、昨年度から男女共同参画の取り組みの一環として、様々な分野や立場で活躍する女性の生の声を聞くセッションを企画しています。今回は第二弾として、管理から利活用まで様々な場面で野生動物と関わる活動をしている4人の女性に話題提供いただきます。難しい局面の多い野生動物管理の現場で柔軟に対応するために、様々な困難にも挑戦するためのヒントについて議論していきたいと思います。
【講演者と講演タイトル】
- 松田奈帆子(栃木県環境森林部自然環境課)
「行政的立場から:行政機関での取り組み」 - 辻 知香(兵庫県森林動物研究センター)
「研究者の立場から:科学データを管理に活かす取り組み」 - 斉田由紀子(獣害コンサルタント代表)
「被害現場の実務的立場から:現場での獣害対策と利活用への取り組み」 - 林 真理(愛deer料理教室主宰)
「資源活用の立場から:シカ肉料理普及の取り組み」
【テーマセッション名】
「自然資源管理を地域社会の文脈に埋め戻せるか?:生態系管理の多様な現場から」
【企画者】
富田涼都(静岡大学)
【趣旨】
近年、自然資源管理の当事者として地域社会が位置づけられることが多い。しかし、地域社会にとって自然資源管理の意義は決して自明ではない。そのため往々にして、野生動物や森林、河川、湖沼などを「利用」し、「管理」するような特定の概念や方法が、地域社会の外から持ち込まれ、社会の齟齬を生む原因にもなる。
たとえば、シカやイノシシを「ジビエ」として「利用」することが全国的に進められているが、こうした「利用」は、地域社会にそれまであった「自然との付き合い方」とどのようにすり合わせができるだろうか。
こうした問題は、狭い意味の「野生動物管理」だけで生じることではない。広い意味の自然資源管理全般において、いかにしてローカルな地域社会の文脈に埋め戻すことができるのかが、地域社会が持続的な管理の当事者となるかどうかのカギを握っている。そこで、本セッションでは、野生動物に限定せず、広く自然資源管理と地域社会の関係に注目し、それらを様々な地域で実証的に研究や実践を行ってきた報告をもとにして、自然資源管理と地域社会の関係性についての見取り図をつくるとともに、今後の展望について参加者とともに検討したい。
【講演者と講演タイトル】
- 安田章人(九州大学)
「野生動物管理と地域社会のインタラクション:北海道占冠村を事例に」 - 三木敦朗(信州大学)
「森林管理と地域社会(仮)」 - 田代優秋(徳島県立佐那河内いきものふれあいの里)
「遊びがつむぐ河川管理:川の中にプールを作った集落」 - 富田涼都(静岡大学)
「自然再生事業における地域社会への文脈の埋め戻し」
【テーマセッション名】
「地域社会と『獣害』:アフリカの事例から」
【企画者】
安田章人(九州大学)
【企画趣旨】
今日の野生動物管理において、野生動物が人間社会にもたらす、いわゆる「獣害」に対していかにして対処するかが問われている。しかし、こうした野生動物と人間社会の軋轢は、日本に限った問題ではない。アフリカではゾウやライオンなどの大型動物・肉食動物による被害が深刻化し、行政や研究者からの関心も高まっている。
本セッションに登壇する4人の報告者は、それぞれエチオピア、カメルーン、ケニア、タンザニアで長期間のフィールドワークをおこない、野生動物と地域社会の関係を調査してきた。各報告は、日本の事例を適宜参照にしつつ、アフリカの各地域で歴史的に野生動物と具体的なかかわりをもって暮らしてきた地域社会の人びとが、今現在「獣害」問題にどのように対応しているのかを検討する。こうしたアフリカにおける人と野生動物の関係の実態に対する分析を通して、いわゆる「獣害」問題および人と野生動物の共存について新たな視点と知見を提起することを試みる。
【講演者と講演タイトル】
- 西崎伸子(福島大学)
「狩猟活動の継承と地域社会の関係:エチオピアの事例から」 - 岩井雪乃(早稲田大学)
「住民が求めるアフリカゾウ獣害対策とは?-自然資源を多面的に利用する - 目黒紀夫(日本学術振興会)
「『害獣』の意味づけの変化―ケニア南部のマサイ社会におけるライオン狩猟とゾウ追い払いの比較から」 - 安田章人(九州大学)
「『資源』、そして『敵』としての野生動物―カメルーン北部におけるスポーツハンティングと獣害対策の事例から―」
【テーマセッション名】
「ビッグデータ時代のデータサイエンスとオープンソースツール」
【企画者】
今木洋大(Pacific Spatial Solutions, LLC)
【企画趣旨】
近年のIT、GPS、LiDARをはじめとするリモートセンシング技術の発展に伴い、自然資源管理の分野で巨大なデータを取り扱う場面が増えてきました。実際にビッグデータと呼ばれる数十テラバイトからペタバイトのデータを扱う場面は少ないですが、今後巨大なデータを取り扱う技術の習得は必須です。そこで本セッションでは、巨大なデータをハンドリングするための様々な技術やツールを紹介し、野生生物と人間社会の共存のためのデータサイエンスについて議論します。
【講演者と講演タイトル】
- 今木洋大(Pacific Spatial Solutions, LLC)
「ワシントン州スノホミッシュ川河口におけるリモートセンシングデータとオープンソースツールを用いた植生判別」 - 八十島裕(Pacific Spatial Solutions Japan)
「空間データベースを用いた環境情報の集積と共有に関する基盤づくり」 - 奥秋恵子(Pacific Spatial Solutions Japan)
「データサイエンスと空間情報解析におけるプログラミング言語Pythonの活用」 - 伊勢紀(株式会社地域環境計画)
「クラウド環境における空間情報管理システムの構築と既存サービスの比較」 - 笹谷大輔(Aurburn University, School of Forestry and Wildlife Sciences)
「自然資源環境管理における統計ソフトRによるデータハンドリングとその学習方法」
【テーマセッション名】
「「野生生物と交通」に関する話題―日本は遅れているのか?」
【企画者】
浅利裕伸(株式会社 長大)山田芳樹(株式会社 ドーコン)
【企画趣旨】
野生生物と社会(人)が関わる問題は多岐にわたる。このうち、国内外で発達した交通網と交通機関は、野生生物に対しロードキルや森林分断化といった大きな影響をもたらす。
われわれは、野生生物と交通の問題を解消するため、「問題・対策事例の周知」「研究の発展・若手研究者の増加」を目指し、これまでにテーマセッションを4回開催している。今回は、国内事例を紹介するとともに、海外と国内の研究や保全対策の動向を紹介する。
【講演者と講演タイトル】
- 原 文宏(一般社団法人 北海道開発技術センター)
「野生生物と交通に関わる海外の事情」 - 浅利裕伸(株式会社 長大)
「日本における野生生物と交通の現状―過去、現在」 - 山田芳樹(株式会社 ドーコン)
「海外と日本の学術誌における野生生物と交通の現状」 - 早川敏雄(公益財団法人 鉄道総合技術研究所)
「鉄道におけるシカ問題の現状と課題(仮)」
【テーマセッション名】
「生物多様性と文化多様性の相互作用:野生生物と社会をつなぐ「文化」を考える」
【企画者】
敷田麻実(北海道大学)・湯本貴和(京都大学)
【趣旨】
自然環境の保全や生物多様性の維持が社会的課題となり、多くの賛同を得られるようになっている一方、私たちの社会が自然環境保全や生物多様性とどう関わるかという「関係性」の問題は十分考察されてこなかった。そして、社会と野生生物の関係も、野生生物保護か利用かという二者択一で思考されてきた。
野生生物が豊かな農山漁村や都市周辺地域、つまり非都市部は、野生生物の利用あるいは保護、また獣害から生活を守る生態学的実践の場であり、逆に都市部は、野生生物と直接対峙しないために、客観的に野生生物を研究や観察し、また野生生物の存在を生態系サービスとしてイメージや観光資源によって文化的に利用する場として分離されてきた。私たちは、自然環境保全や生物多様性維持を進める農山漁村や都市周辺地域と、生態系サービスを享受し、環境に配慮しつつも快適な都市生活を享受する、経済や文化活動の中心としての都市部という、2つの世界の「乖離」や「対立」に直面している。
しかし野生生物保護をはじめとする自然環境保全や生物多様性の維持は、自然環境に恵まれた農山漁村や都市周辺地域だけの問題ではなく、社会的な課題として共有しなければ解決できない課題である。こうした非都市部に一方的に実践を任せ、都市部では文化的な消費を充実させることは持続可能ではない。
そこで、このセッションでは、利用や維持活動も含めた自然環境と社会との「かかわり」が文化の源とした上で、都市部における生態系サービスの高度利用による現代文化や経済活動も評価しながら、生物多様性と文化多様性の相互作用に着目し、「生物文化多様性」や「生物文化相互作用系」という新たな視点で、野生生物と社会の新たな関係を提案する。
【講演者と講演タイトル】
- 敷田麻実(北海道大学)
「生物文化多様性:生物多様性と文化多様性の相互作用から資源管理へのヒント」 - 湯本貴和(京都大学)
「地球環境問題のなかの生物多様性」 - 吉田正人(筑波大学)
「世界遺産関連条約における生物多様性と文化多様性」 - 深町加津枝(京都大学)
「京都の森林利用にみる生物・文化多様性」 - 新広昭(石川県)
「生物多様性に依拠した文化生成の多様性モデルの提案」