「野生生物と社会」学会会長よりご挨拶

「野生生物と社会」学会 会長就任にあたって

岐阜大学 鈴木正嗣

 先日の理事会におきまして,梶前会長の後任を仰せつかりました岐阜大学の鈴木と申します。「野生生物と社会」学会の一層の発展に向け,力の限りを尽くす所存でおりますので,どうかよろしくお願い致します。
 昨年度(2019年度)は,本学会のミッションにも直結する極めて重要な出来事がありました。それは,梶前会長の多大なご貢献のもと,日本学術会議により「人口縮小社会における野生動物管理のあり方」がまとめられたことです。この文書は,環境省自然環境局長からの審議依頼に対する回答として作成され,我が国の野生動物管理の現状と課題とを踏まえた5項目の提言を含んでおります。
 いずれの提言も,今後の野生動物管理を効果的かつ持続的に展開する上で欠かせませんが,とくに注目すべきは「地域に根差した野生動物管理を推進する高度専門職業人材の教育プログラム」と思われます。日本における諸課題の根幹には,「野生動物管理の専門家としての担い手不足」と「その担い手を育てるための教育システムの欠如」があるためです。
 この見解を踏まえ,今期の本学会に課せられた最も大きな役割の一つは,上記「教育プログラム」の構築への貢献と認識しております。その実現のためには,本学会の特徴・強みとも言える自然科学-社会科学-人文科学を跨ぐ分野横断的な学術研究の推進が求められます。加えて,現場担当者や若手研究者の問題意識に基づく論考も欠かすことができず,行政研究部会ならびに青年部会の活動の重要性は,ますます増大することでしょう。
 いま人類は,新型コロナ禍により従来の価値観や社会システムの大転換に追われています。急速に進む人口減少や産業構造等の変化も,私たちが対象とする「野生生物と社会」に同様な転換を迫っています。したがって本学会の存在意義は,これまでにも増して高まっていると考えねばなりません。この状況を強く胸に刻み,吉田正人副会長や角田裕志事務局長を始めとする理事ならびに役員の皆様のご指導を仰ぎつつ学会運営に努力する所存でおります。つきましては,会員各位の更なるご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。

「野生生物と社会」学会副会長よりご挨拶

「野生生物と社会」学会 副会長就任にあたって

筑波大学 吉田正人)

 5月24日に開催された理事会において、副会長を拝命しました筑波大学の吉田です。本学会の副会長は、敷田会長時代に副会長として、本学会の将来構想計画を検討する役割を果たしましたが、その後、湯本会長時代の事務局長、梶会長時代の学会誌編集委員長として、将来構想を実現するため努めてまいりました。事務局長時代は、野生生物保護学会から「野生生物と社会」学会への名称変更、編集委員長時代は、電子ジャーナル化による論文発行の迅速化という課題に取り組みました。
 現在、私たちの社会は、人口減少・高齢化と鳥獣による被害、気候変動等に伴う自然災害の頻発、そしてCSFやコロナウィルスなど野生動物由来の人畜共通感染症など、これまでにない問題に直面しています。これらの問題の解決には、生態学、野生動物医学などの専門家だけではなく、社会学、経済学などの専門家や、国・地方自治体・コンサルタント・NGOなどにおいて問題解決に取り組んでいる実務家の協力が欠かせません。
 野生生物と人間社会との関係を研究対象とし、研究者と実務家が一つの学会に参加して研究や活動を行う本学会の役割はますます重要なものとなっています。
 この3年間では、昨年、梶前会長、鈴木現会長をはじめ、本学会の会員が積極的に参加して日本学術会議から環境省へ答申された「人口縮小社会における野生動物管理のあり方に関する検討委員会」の提言を実現するための人材育成が最大の課題となるかと思いますが、同時にCFSやコロナウィルスなど野生動物由来の人畜共通感染症などの問題に対しても必要な提言を行いたいと思います。また、「野生生物と社会」に関わる問題に取り組む研究者・実務家の協力、若手研究者の育成に対しても、本学会としてできることは何かを考え、実行してまいりたいと思います。
 会員の皆さまのご協力をお願い申し上げます。