「野生生物と社会」学会会長・副会長よりご挨拶

会長 赤坂 猛(酪農学園大学)

2014年5月

 去る5月10日の理事会におきまして、湯本前会長の後任に選ばれました酪農学園大学の赤坂です。どうぞよろしくお願いいたします。
 近年、野生生物を取り巻く状況は目まぐるしい動きをみせています。中大型哺乳類の分布域拡大に伴う農林業被害等の各種軋轢の増大、里地・里山からの人や集落の撤退等に伴う生態系の改変や希少生物への影響、さらには外来生物による生態系への悪影響などなど、深刻な社会問題が次々と惹起されています。このような野生生物がもたらす様々な問題を、地域社会がどのように合意形成し「折り合い」を取り付けていくのかが問われている時代でもあります。
 当学会では、野生生物と人・地域社会との多様な関係のありようを調査研究し、その問題解決を目指すことを鮮明にすべく2012年度に現名称へと変えたところであります。野生生物と地域社会の「折り合い」を見出すべく様々なステークホルダーが「知のプラットホーム」において協働・連携を深めてゆくことが求められています。
 新たな学会名のもと、鈴木正嗣副会長や鈴木克哉事務局長をはじめ理事及び役員各位のご協力等をいただきながら、学会運営に鋭意努める所存です。会員各位のさらなるご理解やご協力を心よりお願いいたします。

副会長 鈴木正嗣(岐阜大学)

2014年6月

 先の理事会にて副会長を任ぜられ,赤坂会長の補佐を担当させて頂くことになりました。本学会の発展に向け精一杯の努力を続ける所存でおりますので,どうかよろしくお願いいたします。
 さて,折しも本稿を取りまとめているさなか,改正鳥獣法が「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」と名称と変えて成立いたしました。今回の改正で注目すべき点の一つは,保護と管理のそれぞれについて定義づけが行われたことです。そして,第2条に記されたこの定義を表面的に読む限り,保護と管理とは相反する「対立」概念のように見えてしまいます。
 しかし,両者は表裏一体の関係にあり,「両立」は不可能なことではありません。たとえば,シカ個体群の適切な管理は,植生の衰退を防ぎ,その生息環境を守ることにつながります。被害軽減を目的とする捕獲も,効果的に展開すれば地域住民の生産活動をサポートし,結果として地域の生物多様性は「第2の危機」から守られることになります。
 本学会に対しては,「野生生物保護学会からの名称変更により,被害対策等の社会ニーズを優先させる方針に転じ,保護の精神を捨て去った」と見なす声があります。確かに,上記のように保護と管理とを「対立」する概念と考えるのであれば,このような見解もあり得るでしょう。が,本学会の目的は「野生生物と人・地域社会との多様な関係のありようを調査研究し,その問題解決を目指す」ことにあります。これは,保護と管理とを表裏一体のものと捉え,適切な折り合いのもとでの「両立」を追求する態度に他なりません。  私自身の経験等を考えれば,この「保護と管理との両立」の実質化と社会への提示こそが,本学会の発展に向けての個人的な役どころと認識しております。つきましては,これまでと同様,忌憚のないご意見やご指導,ご叱責等を頂ければ幸いです。