動物の死体はどこへ行く?〜食肉を用いたトライアル〜 *1須田 知樹・2上野 岳人 1野生生物保護学会・2宇都宮大学大学院 野生動物の有害駆除は、野生動物から被る農林業被害の対策として最も頻繁に行われる手段である。鳥獣保護法の改正により、特に、シカ、サル、イノシシによる農林業被害対策として至極当たり前のようにこれらの動物の有害駆除が全国的に行われている。人間領域にはみ出してきて、人間の生産活動を妨げる動物を「有害動物」として「駆除」するのはやむを得ないとしても、自然領域として位置づけられるべきである国立公園あるいはその周辺地域における有害駆除は、そのあり方について十分な議論が成されるべきであろう。大台ヶ原や日光などが代表的な例と言えるが、シカが植生を撹乱するという問題の解決手段としてシカの個体数調整が実施されている。調整、すなわち捕獲されたシカは埋葬あるいは捕獲者により消費されるわけであるが、いずれの場合でも、自然死亡の場合とは死体の消費過程が異なる。なぜなら、野生動物は捕獲した獲物を埋葬しないし、生態系の外部へ持ち出さないからである。したがって、自然領域における野生動物の個体数調整の生態学的正当性を検討するためには、野生動物の死体が自然条件下でどの様に消費されるのかを追跡する必要がある。演者らは一昨年の6月に食肉用の牛肉を用いて、日光国立公園内のミズナラ林二個所において、その消失過程を追跡した。本講演では、定性的ではあるが、その経過を報告し、食肉と実際の死体との消失過程の相違点について考察する。 コンタクトオーサー 須田 知樹:〒183-8509 東京都府中市幸町3-5-8 東京農工大学農学部生態系計画学講座内野生生物保護学会事務局 Tel 042-367-5737、Fax 042-367-5738 Email: sudak@topaz.ocn.ne.jp