ニホンテンの密度指標3手法試案 −INTGEP, ビームライト, 糞密度− 1須田 知樹・2倉島 治・3小金澤 正昭・*3金子 健太郎 1東京農工大学・2東京大学・3宇都宮大学  テン属の研究は欧米を中心として生息地選択、食性、行動圏面積などが主になされてい るが、個体群生態学的研究は少ない。特に、そのベースとなるべきセンサス方法は全く開 発されていない。視認しにくいこと、テリトリアルであること、フィールドサインを発見 しづらいことなどがその原因と考えられる。発表者らは、昨年、一昨年の本学会発表で、 ニホンジカによる生息地攪乱が、ニホンテンの食性へも影響することを発表した。この影 響が、ニホンテンの個体群密度へも及ぶのかを解明するためには、ニホンテンの密度指標 手法を開発する必要がある。そこで本研究では、INTGEP法、ビームライトセンサス、糞密 度法の3手法を比較した。調査地は、栃木県奥日光市道1002号線(踏査距離約10km)沿いでで ある。INTGEP法に用いたデータは、2002年2月に行った市道から幅500mの踏査による足跡 調査と2001年2月に行った24時間連続ラジオテレメトリーである。ビームライトセンサスは 2002年5月から8月にかけて、市道から行われた。糞は、市道の踏査により2000年4月から6 月、9月から12月、2001年4月から6月に回収された。得られたデータを市道前半約5km(小田 代側)と市道後半(千手側)に分けて各手法を比較したところ、INTGEP法とビームライトセ ンサスは小田代側で密度が低く千手側で高いという類似した結果が得られたが、糞密度は 小田代側で高く千手側で低くなった。糞密度法がもっとも簡便に行える方法であるが、今 回の結果から、密度指標として用いることが困難である可能性が示された。一方、INTGEP 法、ビームライト法は有効である可能性があるが、INTGEP法は足跡の残る積雪期にしか実 施できないため、周年を通してニホンテンの行動圏が一定である必要がある。また、ニホ ンテンは薄明薄暮に行動量が増すため、ビームライトセンサスを行う際には、観察時間帯 を考慮する必要がある。ニホンテンの密度指標の確立には、今後、自動撮影装置やDNAを マーカーとした記号放逐法などいくつかの手法を試験、開発する必要がある。 コンタクトオーサー 須田知樹 東京農工大学農学部 〒183-8509 府中市幸町3-5-8 東京農工大学農学部野生動物保護学研究室 Tel:042-367-5737 E-mail:sudak@topaz.ocn.ne.jp